©「散歩時間〜その日を待ちながら〜」製作委員会
新型コロナで行動が制限された2020年。友人と集まることも難しく、やりたかったことが叶わない現実に、慣れていく自分。行き場のない怒りを抱えた苦しい日々。しかし「世界中の誰もが」同じこの状況で、自然と社会の速度は緩やかになり、自分や家族と対峙する静かな時間を過ごしながら「これまで」と「これから」を考えるようになった。そんな、散歩するようなゆっくりとした時間が訪れたことは“いいこと”だったのかもしれない。本作では世代も職業も異なる人々が過ごした、2020年の「しし座流星群」が降った一夜を映す。何気ない日常風景には、しんどかったことも、いいことも切り取られる。そこに重ねられたロマンチックな現象は光となり、肩を重ねる主人公たちを見て「未来はきっといいことになる」と願わずにはいられない。希望を忘れない、私たちが懸命に生きる”現代”を記録した新しい作品となった。監督を務めたのは、直木賞作家・道尾秀介原案の映画『名前』や『13月の女の子』、『僕たちは変わらない朝を迎える』など、若手俳優や群像劇の演出に定評のある戸田彬弘。脚本は、香取慎吾主演ドラマ『誰かが、見ている』で三谷幸喜氏との共作に抜擢されたガクカワサキが担当。群像劇の主人公となる若者たちは、映画『あゝ、荒野』(岸善幸監督)や『由宇子の天秤』(春本雄二郎)など話題作に続々出演する前原滉。映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二監督)、映画『君の膵臓をたべたい』(月川翔監督)など名だたる監督作品に出演を続ける大友花恋。そのほかの出演者には、中島歩、柳ゆり菜、篠田諒、めがね、山時聡真、佐々木悠華、アベラヒデノブ、高橋努など監督が信頼する若手からベテランまで、様々な俳優が名を連ね、キャラクターと近い実体験を持った役者たちが、リアリティのある息遣いを見事に演じた。
舞台は2020年11月17日。婚約をしたものの、コロナの影響で結婚式をすることができなかった20代の亮介(前原滉)とゆかり(大友花恋)。引っ越しの整理もままならない二人だが、都会から離れた町に住む真紀子(柳ゆり菜)の自宅で友人たちがお祝いパーティーを開いてくれることになり、稲田(中島歩)や圭吾(篠田諒)、そして真紀子の知り合いのインフルエンサーちひろ(めがね)らが集まる。しかし、自分の意見に合わせるばかりで、本音を話さない夫に不安を募らせていたゆかりは、彼の隠し事を知ってしまい、祝いの席に不穏な空気が漂ってしまう。同じ空の下、様々な人物がやり切れない想いを抱えて毎日を過ごしている。急増するデリバリー案件に答えながら出演舞台が中止になる日々を送る30代の若手俳優の片岡(アベラヒデノブ)、帰省できず里帰り出産のわが子を抱くこともできない40代のタクシードライバーの淡路(高橋努)、そして、学校イベントのほとんどが中止となり、長年の恋心さえも伝えられずにいる中学3年生の光輝(山時聡真)と鈴(佐々木悠華)。この日は、しし座流星群がピークを迎える日── 恋人や親友、我が子との間でさえも曖昧になっていく他者との繋がりに、それぞれが葛藤を抱えながらも、たしかな一歩を踏み出そうとする彼らの空に、流れ星が降り注ぐ。
前原滉 大友花恋 柳ゆり菜 中島歩 篠田諒 めがね 山時聡真 佐々木悠華 アベラヒデノブ 高橋努
原案・監督・編集:戸田彬弘/脚本:ガクカワサキ/音楽:茂野雅道/プロデューサー:深澤知/アソシエイトプロデューサー:高橋淳 渡辺真人 撮影:春木康輔/照明:大久保礼司/録音:岸川達也/美術:中村哲太郎/制作プロダクション:チーズfilm