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亮太を演じるのは、『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』『かぞくのくに』などで映画賞に輝いた井浦新。爽やかな風貌の奥に心の揺らぎをにじませ、繊細な演技を披露してくれる。亮太とは対照的に実家暮らしで無職の章一には、大橋彰。お笑い芸人アキラ100%としてのキャラクターを封印し、本名で初の大役に挑戦した彼は、特にクライマックスでは稀に見る演技で観る者の心を鷲掴みにする。
原案・監督は『ゆらり』の横尾初喜。自身の幼少時代の実体験を基にした半自伝的なストーリーを作り上げ、故郷の長崎県でオールロケを敢行。海の見える坂道が印象的な佐世保市や路面電車が走る長崎市を舞台に、市民キャストを含む大勢の地元の人々の協力を得て完成させた。夫人で女優の遠藤久美子が、自分自身とも言える亮太の妻役を好演している。
長崎県に住む広永亮太(井浦新)は35歳。幼い頃に別れた父のことはほとんど覚えていないが、父が借金とともに残していったガラス細工会社を受け継ぎ、どうにか経営を立て直しつつある。その一方で、かつての父と同じように離婚し、ふたりの息子とずっと会っていない亮太。現在の妻の友里恵(遠藤久美子)とは幸せに暮らしているが、ある日、友里恵から妊娠を告げられ、喜びながらも父親になることへの一抹の不安を覚える。そんな折、母の元子(木内みどり)と暮らす兄の章一(大橋彰)が、街で父を見かけたと言い出した。いい加減なことばかり言って仕事もせずにぶらぶらしている兄が、いつになく真剣な面持ちで父への恨みも口にしたため、亮太は衝撃を受ける。兄に付き合って父を捜し始めた亮太は、自分たちと別れた後の父の人生に思いを馳せる。忘れかけていた子供時代の記憶が蘇り、若き日の母が垣間見せた孤独な姿も思い出すようになる。母は今でも父のことを話すのを嫌がり、亮太が理由を訊いても教えてくれない。そんな母に内緒で父を捜し続けた亮太と章一は、唯一の手がかりとなりそうな元従業員の女性の住所を手に入れるが、その住所を訪ねると、女性はすでに転居してしまっていた。父親捜しは暗礁に乗り上げた。そもそも兄が父を見たというのは本当なのか? 亮太は章一を疑い始め、兄弟の仲が険悪になりかけたとき、母が病に倒れた。病床で初めて、「お父さんは優しかったとよ」と語る母。友里恵が息子の亮平を出産した数カ月後に、母はこの世を去った。そして葬儀の日、ついに亮太と章一は父に関する有力な情報を得る――。
井浦新 大橋彰(アキラ100%) 遠藤久美子 嶋田久作 塩田みう 寿大聡 鶴田真由 石倉三郎 鶴見辰吾 木内みどり
監督・原案:横尾初喜/エグゼクティブプロデューサー:相羽浩行/プロデューサー:小関道幸、兼田仁、森田篤/ 脚本:守口悠介/撮影:根岸憲一/照明:本間光平/録音:根本飛鳥/美術:小栗綾介/主題歌:「こはく」Laika Came Back/ 音楽:車谷浩司/制作プロダクション:FOOLENLARGE