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日本の刑務所満期出所者が5年以内に再犯し、再び入所する確率は約50%。「世界一安全な国」を標榜しながら、一体、なぜ出所者は再び罪を犯してしまうのか?背景には、再入所者の7割が無職だったという事実が示すように、元受刑者は「就労」がしづらいという大きな問題が横たわる。単にお金を稼ぎ、安定した住居を得るというだけでなく、他人から認められる意味でも社会復帰に重要とされている就労の問題は、数多ある映画の中でも、これまで大きく取り上げられることはなかった。本作は、受刑者の採用を支援している実在の就職情報誌の活動にヒントを得て制作された劇映画である。監督は劇映画からドキュメンタリーまで幅広く手がける舩橋淳。実際のセクハラ事件に基づいて役者との即興劇で描いた前作『ある職場』と同様、自らプロデューサーも務め、前作とほぼ同じキャスト・スタッフで、前科者の社会復帰に横たわる問題を描いた。その先に見据えるのは、社会の不寛容が新たな犯罪を生んでしまう悪循環を変えたいという想い。あえて台本は用意せず、現場で俳優と演技を煮詰めてゆく「ドキュメンタリー×ドラマ」の演出手法は、観るものに震えるようなリアリティをもたらすだろう。
受刑者向けの就職情報誌「CHANGE」編集チームは、出所者の就職あっせんと更生支援をしていた。チームのひとり藤村(35)は、ひき逃げによる殺人罪で10年服役した田中(34)を担当し、中華料理屋に就職させたもののキレやすい性格でトラブル続き。女子児童へのわいせつ行為により2年服役した元教師・三隅(37)は、職に就いたとたんすぐ消息を絶ち、チームを落胆させる。薬物常習で2年服役後出所した森(30)は清掃会社で働くものの、長年続くコミュニケーション障害でなかなか社会にフィットできない。社会復帰に向けてもがき苦しむ元受刑者を目の当たりにした藤村らは、アメリカの演劇による心理療法・ドラマセラピーを提案。元受刑者たちと稽古を重ね、舞台『ツミビト』を公演するまでに至るのだが…。舞台初日の観客の反応は、彼らにとって全くの予想外だった。
辻井拓、久保寺淳、田口善央、紀那きりこ、峰あんり、満園雄太、みやたに、伊藤恵、小林なるみ、平井早紀
撮影・録音・脚本・編集・監督:舩橋淳 プロデューサー:舩橋淳、植山英美