©VEIT HELMER-FILMPRODUKTION,BERLIN AND NATURA FILM,TBILISI
映画の主人公は、緑あふれる山の谷間をつなぐ古い2つのゴンドラ(ロープウェイ)とゴンドラの2人の女性乗務員。ゴンドラは行ったり来たり。世界のどこかに行くわけではないけれど。想像力があればどこへでも行けるのだ。映画にセリフはない。どこか懐かしいような音楽と、キャラクターたちの豊かな表情と、美しいロケーションが、観客に魔法をかける。東京国際映画祭はじめ世界62の映画祭に招待され、10の賞を受賞した『ゴンドラ』は、ヨーロッパでもアジアでも、国境をこえて、見る人を笑顔にしてしまう。ゴンドラは自由と幸福を乗せていく。わずか85分で観客に映画の魔法をかける本作。監督は『ツバル TUVALU』『ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を』で知られる〈セリフなし映画〉の名匠ファイト・ヘルマー。日本公開作は多くないが、その唯一無二の世界観にファンが多い。「セリフがないから生まれる映画的瞬間を見てほしい」(監督)。まさにその言葉通り。ゴンドラは、ジョージア(旧グルジア)南部、小コーカサス山脈の西にあるフロという小さな村に実在する、「ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラ」が使われている。ソ連時代に作られたさいゴンドラで、現在は観光客も訪れる。レトロで可愛くて、なんと映画の中では衣替えまでする映画の主役である。
イヴァは村のゴンドラ(ロープウェイ)の乗務員として働き始める。もう1台のゴンドラの乗務員はニノ。駅長は威張り屋で、その態度ときたら腹が立つことばかり。行ったり来たり、すれ違うゴンドラは世界のどこかに行くわけではないけれど。 想像力があればどこへでも行けるのだ。2人はゴンドラに“衣替え”させ、ニューヨーク行きの飛行機にしたり、リオ行きの蒸気船にしたり、火星行きのロケットにしたり。奇想天外なやりとりは、2人の距離をどんどん近づけていく。そしてある日、2人の優しい悪戯が駅長を激怒させ、やがてそれは地上の住民も巻き込むのだが……。
ニニ・ソセリア、マチルド・イルマン、ズカ・パプアシヴィリ
監督・脚本:ファイト・ヘルマー 撮影:ゴガ・デヴダリアニ 美術:バチョ・マハラゼ 音楽:マルコム・アリソン、ソーレイ・ステファンスドッティル