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1985年に『冬の旅』を観て感動したジェーン・バーキンは、アニエス・ヴァルダに初めて手紙を書いた。しかしその手紙の内容が「判読不能」だったアニエスは、ジェーンが何を自分に伝えたかったのかを知りたくて、オー=ド=セーヌ県のソー公園に誘い出した。その日は日曜日で、ジェーン・バーキンは嘆いていた。「最悪!もうすぐ40歳になるのに。」当時57歳だったアニエス・ヴァルダは、彼女の言葉に呆れてしまった。「馬鹿げているわ、素晴らしい年齢じゃない!あなた自身のポートレートを撮る時が来たのよ!」この時のランデブーが、アニエスとジェーンを結びつけ、『アニエス V.によるジェーン B.』を生み出すきっかけとなった。
『アニエス V.によるジェーン B.』はジェーンから提案された幾つものプロットを、アニエスが、時代のアイコンであるジェーンの肖像画を何枚も描いていくような手法で制作が進められていた。当初はその中の一つのプロットとしてジェーンから提案されたのが、思春期の少年に恋する女性の話『カンフーマスター!』だった。アニエスはこの企画の脚本は書いてみたものの、監督はパトリス・シェローに相談したらどうかと考えていた。しかしジェーンが彼女の書いた脚本に愛着を感じていることを知り、やはり自分で監督しようと思い直した。
ジェーンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、アニエス・ヴァルダの伝説の女性への尽きることのないイメージがヴィヴィッドに展開する。その空想は、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのように男たちのファンタジーの対象である女性、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・ジェーン、ターザンのジェーン、そしてジャンヌ・ダルクへと、ジェーンのイメージを自由自在に拡張させていく。アニエスはまるで自身が画家でもあるかのように、ジェーンを名画の中に息づかせることも忘れない。一方で綴られるジェーンの日常のスケッチ。そこにはセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの時間も織り込まれる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しく、危うくて儚くて美しい、ジェーン・バーキンの魅力を余す事なく切り取った、アニエスによる私的な肖像画になっている。
ジェーン・バーキン / ジャン=ピエール・レオー ラウラ・ベティ フィリップ・レオタール アラン・スーション セルジュ・ゲンズブール シャルロット・ゲンズブール マチュー・ドゥミ フレッド・ショペル
監督・脚本 : アニエス・ヴァルダ
娘(シャルロット・ゲンズブール)が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン(マチュー・ドゥミ)を介抱したマリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を持っている。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる二人。そんなある日、二人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。
ジェーン・バーキン マチュー・ドゥミ / シャルロット・ゲンズブール ルー・ドワイヨン デヴィッド・バーキン ジュディ・キャンプベル アンドリュー・バーキン
監督・脚本 : アニエス・ヴァルダ 原案:ジェーン・バーキン